コチでポルターガイスト

コチで人生初の体験

アラビア海に面したインド南部の街、コチ(コーチン)はケララ観光の起点として、今でも多くの観光客で賑わうが、古くから商業と貿易の街として栄えてきた。しかし、1500年代の初めポルトガルによって占領され、その後もオランダやイギリスの植民地となったところだ。そんなわけで、コチでもフォートコーチンと呼ばれるエリアには、今でも当時の面影を色濃く残すキリスト教会やユダヤ教シナゴーグなどが残っており、またヨーロッパ人の後裔が住む一画もあって、ヨーロッパ情緒がそこはかとなく漂っている。

Vasco da Gama
バスコ・ダ・ガマの埋葬跡

1503年に建てられたインド最古のキリスト教会、聖フランシス教会には、教科書でおなじみのバスコ・ダ・ガマが一時埋葬された跡がある。何故か遠い親戚のおじさんの墓に参ったような気分になる。

さて、話は、フォートコーチンではなく、もっと賑やかな、インドらしいエルナクラム地区でのことだ。

2011年4月、初めての南インド旅行の最終日前日、旅の最後の宿はごく普通のスタンダードクラスのホテルだった。夜、部屋に戻った私は、スーツケースを整理して帰り支度を終え、ベットの上で、デジカメで撮った写真を見ていた。

8時。ガタガタという音とともにベッドが大きく揺れた。「地震だ」と思った。揺れはなかなか止まなかったが、地震慣れしているせいか、パニくることもなく、ベッドの手すりにつかまって、じっとしていた。

ところが、異変に気付いてしまったのよ。

揺れているのはベッドだけ。部屋の中の他のものは何も揺れてないのだ。「なんなのだ!」私はベッドから飛び降り、電話をひっつかんで、緊急連絡をガイドさんにした。

血の気がひくとはこのことだ。インドで人生初のポルターガイスト現象を体験してしまった。インドでは、私みたいな霊感のかけらもない人にも不思議現象が起こるのか。恐るべし。インディア。

ガイドさんはすぐに来てくれて、イスラム教のマントラを唱えてくれた。初めて聞くアラビア語のマントラというのも、それはそれでかなりなものだったが、妙に、落ち着いて、部屋を変えるというオファーも断り、朝まで爆睡した。

日本に帰り、旅行社に事の次第を話したら、「よくあるのですよ。私は幽霊を見ましたよ」と社長さんに言われてしまった。

よくあるって…..なんかなぁ。