
確かにコダイカナルは神秘的だったけど。
何年か前の話になるが、こんな話がネットに流れていたのをご存知だろうか。
2001年の3月、一人の日本女性が南インド、コダイカナルの小さな村で休暇を過ごしていた。
ある日、二人のフランス人旅行者と話をしていると、そのうちの一人が、「アメリカが攻撃されて、3025人が犠牲になったというニュースを昨夜、ラジオで聞いた」といった。
そこで、3人はもっと詳しい情報を集めようと街に出かけたのだが、誰もそんな話は知らないという。きっと、夢でもみたのだろうと、彼女もすぐにその話を忘れてしまった。
ところが、半年後の2001年9月、彼女は夫と英国にいて、テレビでアメリカ同時多発テロを知る。そして、3000人を超える犠牲者が出たとの報道を聞き、コダイカナルでの出来事が一瞬にして蘇った……………。
インドならあり得るかもしれない!私の旅行を手配してくれた旅行社の人もインドで幽霊を見たっていっていたし。不思議な話は枚挙にいとまがないもの。
というわけで、2014年、真相を確かめようと、南インド旅行にコダイカナルを加えてみた。
コダイカナルはインドの西側、アラビア海に沿うようにして走る西ガーツ山脈南部からやや東へ入った、標高2500mの小さな避暑の町だ。辺りはうっそうとした森に囲まれ、8月だというのに肌寒い。
シーズンオフで閑散としたコダイカナルは、深い霧に包まれ、なかなかミステリアスな雰囲気。ちょっと、期待してしまう。
早速、小さな本屋さんに入って、聞き込みを開始する。
私 「すいません。コダイカナルの観光案内本ください。」
店主「ない。」
私 「へ?ないの?パンフレットでもいいのですけど。」
店主「ない。」
私 「コダイカナルって時々、不思議なことがおこる土地だって聞いてきたのです けど、何か、お聞きになったことありますか?」
店主「知らんな。」
その後も、誰に聞いても、笑うだけ。「サイババの夏の屋敷があるから、そんな噂も出るのだろう。」という人もいたけど、それにしても、見事なガセネタだったぁ。
まあ、そんなものよね。
でも、ひとつ、楽しい思い出がある。
インド人ガイドさんの「ガンジー ジ」の声に振り向くと、濃霧の中を一人、粗末な綿布カディをまとい、黙々と歩くマハトマ・ガンジーそっくりな老人がいた。
コダイカナル・イリュージョン。
帰りの車の中、ひとしきり、このガンジーさんの話題で盛り上がった。何だか、コダイカナルが楽しいいたずらを仕掛けてくれたような気がした。