ハッサンつながり

南インドでハッサンとはこれいかに

何時の事だが忘れてしまったが、トラやら象やらの広大な野生動物保護区を抜け、自分が一体どこに向かっているのかも分からなくなるほど長く車に揺られ、睡魔を追い払うのが難しくなって来た頃、ドライバーさんがぽつり。

「道に迷った」。「え?」

以降、現地人に道を聞きながらのドライブとなる。一体、何語で話しているのやら、皆目見当がつかなかったが、「ハッサン」という地名だけは分かった。ハッサン。妙に耳馴染みのある名前だ。ドラクエの登場人物か? そんなこんなで、ハッサンの地名は私の記憶に長く残ることになる。

さて、カルナータカ州ハッサン地区は、今でこそ静な田舎町であるが、その歴史は古く、世界史で習う古代インド4大王朝の一つ、サータバーハナ朝衰退後の、3世紀後半に興ったカドンバ朝や、5世紀末に興ったガンガ朝の支配を受けていたようだ。しかし、ハッサンの名前を世に知らしめている理由は、なんといっても1000年から1334年をピークとするホイサラエンパイアの本拠地であったことであろう。

そのハッサンという名前の由来だが、諸説あって、どれが本当か知る由もないが、最も一般的なのは、「ハサネシュワラ」(Hasaneshwara)と呼ばれるシヴァ神の名前に由来しているというものだ。また「ハース・シャナシ」(Haasan-i-Shanash)というアラビア語由来とする説もあるようだ。

べルール チェンナケーシャヴァ寺院

ホイサラ朝は多くのヒンズー建築や驚異的な彫刻の傑作を残したが、中でもべルールのチェンナケーシャヴァ寺院やハレビードゥのホイサレーシュワラ寺院は圧巻で、世界遺産になっている。

ハレビードゥ ホイサレーシュワラ寺院の彫刻

また、ハッサンから50kmほどのシュラバナ・ベラゴラにはジャイナ教の聖地があり、10世紀に建てられた高さ17メートルの巨大なジャイナ教の救済者ゴンマテーシュワラ(バフバリ)像は圧巻である。

救済者ゴンマテーシュワラ

ハッサンと言ったら

余談だが、ハッサンと言ったら、どうしても、浮かんでくるのが、ハッサン国王とハッサン・カーン。前者は数奇な運命を辿った前のモロッコの王様、そして後者は谷崎潤一郎と芥川龍之介の短編に出てくる、婆羅門の妖術を極めたコルカタの妖術師だ。因みにベンガルの黒魔術はインドで一番強力らしい。ハッサン・カーンの弟子達が今も本当にいるのではないかとちらと思う。