アウランガーバードの孝行息子

「貧乏人のタージ」って….

インド西部アウランガーバードは、その名が示すとおり、

Aurangabad map
オーランガバード地図

ムガール帝国第6代皇帝アウラングゼーブによって名付けられたデカン高原の都市である。上掲の写真はインドが誇る世界遺産タージマハルに似ているが、タージマハルほどの豪勢さはなく、白大理石の代わりに漆喰が使われていたりして、「貧乏人のタージ」とか「貧相なタージ」とか、さんざんな呼ばれ方をしている、アウラングゼーブの奥方の霊廟ビービー・カ・マクバラーである。

ムガール帝国の都、アグラのタージマハルに眠っているのは、アウラングゼーブの父、第5代皇帝シャー・ジャハーンと母、ムムターズ・マハルである。

パーンチャッキーの小さなお坊さん

さて、貧相なタージの近くにパーンチャッキー(水車場)と呼ばれる公園がある。ここは満々と水をたたえる貯水池や涼しげな大木があり、小さいながらも庶民の憩いの場だ。また、アウラングゼーブの導師の墓やモスクもある。

panchakki pond
パーンチャッキーの貯水池

インドの日差しを避けて、木陰で休んでいると、11-12歳ぐらいの賢そうな少年が近寄ってきて、ガイドをするという。慣れた様子でパーンチャッキーの説明を終えると、今度は聖人の墓に連れて行ってくれた。女性は建物の中に入れないというので、外から覗いていたら、少年が孔雀の羽のほうきで墓を掃き、そのほうきをもって建物から出てきた。

何をするのかなと思って見ていたら、そのほうきで私の頭を祓ってくれた。なるほど、そういうことか。それにしてもイスラム式のお祓いは、神道のお祓いにそっくり。神妙な顔でお祓いをする小さなお坊さんの前に私は首を垂れて、ちょっと愉快な気持ちになった。

お祓いが済み、少しばかりのお布施を渡すと、喜んだ少年は、同じ敷地で商売をしている両親のところに連れて行ってくれた。その両親は地べたに体重計をおき、体重を測るという商売をしていたのだが、両親ともに満面の笑みで、私にその体重計に乗れという。

だれが衆人環視のもとで体重計にのるんじゃいといいたかったのだけど、そこは満面の笑みを返しつつ、丁重にお断りした。

インドでは働いている子どもをよく見かける。児童労働は深刻な問題で軽々なことはいえないけれど、この少年の家族を助けたいという純粋な想いは心に響いた。