カルナータカ バダミの河童

チャールキヤ朝の石窟寺院

カルナータカ州の北部、バガルコット地区は、西暦550年にこの地区を征服したドラヴィダ系のプラケシ1世治世下のチャールキヤ朝の首都であり、本日の主役バダミ村(Badami)は550年から753年までその王座があったところだ。

かの地の見事な石窟寺院遺跡は、チャールキアン様式の代表であり、アガスティアティルタ池南側の岩山に彫られた4つの石窟寺院からなる。

第1~3窟が6世紀後半につくられたヒンドゥー教寺院、第4窟が7~8世紀につくられたジャイナ教寺院だ。そのひたすら石を掘って作られた見事な彫刻群は、静かに昔の栄光を今に伝えている。

バダミの河童

さて、そんな小さな村のホテルに泊った時のこと。

ホテルには小さいプールがあった。その日、私についてくれた若いツアーガイドの男子がプールを見て、泳いでみたい言った。聞けば、彼、生まれてこの方、一回しか泳いだことがないのだそうだ。そこで、一緒に行ってやることにした。

彼は、意気揚々とプールに来たはいいが、水を前に固まっている。「どうすればいいか、忘れた」とか言ってもじもじしている。こっちはだんだんイライラしてきて、「早く泳げ」だの、「一回おぼれろ」だの日本語で悪態をつきまくっていたのだが、ついに観念したのかサブーンと水の中へ。

で、私は久しぶりに見た。

必死で泳いでいるのに前にも後ろにも進まない水泳!

教えられるほど上手くはないのだけれど、静かな田舎のプールで私は熱血コーチと化した。根がまじめな彼は猛特訓の甲斐あって、なんとか、泳げるようになった。

まあ、それはいいんだが、彼はプールが気に入ったみたいで、私がコーヒー2杯とチャイ2杯を飲み終わっても誰もいないプールでまだ、泳いでいた。

 

そんなわけで、あの教科書で習った古代北インドの王朝、名高きハルシャ王のヴァルダナ朝を斥けた、ドラヴィダの雄、チャールキヤ朝の最高傑作より、完全に仕事を忘れて河童と化したあの若いガイド君の楽しそうな姿の方が印象に残っている次第である。

ドラヴィダ語族の中で最も古い言語のひとつ、カルナータカ州の公用語でもある[カンナダ語]でカエルはಕಪ್ಪೆ(kappe)というらしい。楽しい偶然。

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